東野圭吾「手紙」

wadama552006-10-09

大阪に向かう新幹線の中で、東野圭吾さんの「手紙」を読みました。



犯罪加害者の弟が物語の主人公。"犯罪を起こした本人ではないのに、なんとなく気を使われなければならないような状況、差別"を前に、いくつもの人生のチャンスを掴みかけながら、そのレッテルがある為に、手放さざるを得ない。「自分だけがひどい目にあっている」と主人公は周囲を、そして兄を、恋人を憎んだり失ったりしてしまう。


バイトしながら通信制の学校に入りバンドのボーカルをはじめてプロを目指す、というエピソードは、自分の過去の鏡を見たようで非常に共感。主人公の就職先の社長の言葉にも共鳴。


社会に出て、結婚をしてもいまだ付きまとう影。ラスト数ページの原点回帰ともいえる主人公の行動に自分を投影して新幹線の中にもかかわらず、感動してしまいましたw



社会派とミステリーの谷間をシンプルな文体で書き進める、理系なのに文系的な世界観を創れる作者は、すごい、と思います。東野さんの本は「秘密」が一番好きなのですが、それと変わらないくらい印象深い本になりました。