椿山課長の七日間
現実に、どんなファンタジーやロマンチックを詰め込むか。まるでお菓子が詰め込まれた子供のポケットのように、言葉が宝石のように本の随所に散りばめられる。
浅田次郎さんの「椿山課長の七日間」はそんな素敵な小説。タイトルを見たときは、こんなに感動する本だとは想像もつかなかったです。
不慮の事故で亡くなってしまった3人が、それぞれ悔やまれることを解消するべく現世に舞い戻ったら・・・生前の自分と真逆の姿を借りて、猶予期間はたった7日間。
浅田節で、テンポ良く3人それぞれの視点でアンサンブルの演奏のように書き分けられ、ページをめくる毎に音が徐々にシンクロしていく。3人の運命を彩る関係者が、ポイントポイントでソロのような名セリフで主演に花を添える。
『この世に100の恋愛があるとする。でもそのうちの99は偽物。なぜかって、それは自分のための恋愛だから。私は、100あるうちのひとつしかない本物の恋をしていた。それは、すべてを愛する人に捧げつくせる恋愛です。あの人のためなら命もいらない。お金も、誇りも、私自身の恋する心すらもいらない』
日常の風景や出来事に、ありえないことを少しだけ付け足すと、笑いも涙もが浮き上がってくる。滋賀から大阪にでる電車の中で、思わずむせび泣きしそうになりましたw